起業は人生の中でも大きな挑戦の一つです。アイデアや情熱があっても、それだけでは事業は継続できません。多くの起業家がつまずく原因の一つが「お金の管理」です。特に創業初期は、収益が安定しない中で設備投資や人件費などの支出が先行しがち。気づかないうちに資金繰りが厳しくなり、最悪の場合には廃業に追い込まれるケースも少なくありません。
本記事では、創業期に特に気をつけたいお金の扱いについて、5つの鉄則にまとめて解説します。これから起業する方、あるいは創業間もない方にとって、少しでも役立つ指針となれば幸いです。
創業期に失敗しないための「お金の管理」5つの鉄則とは
創業期に失敗しないための「お金の管理」5つの鉄則につき、以下の内容で説明します。
- 鉄則①:まずは「資金繰り表」を作成する
- 鉄則②:「固定費」はできる限り抑える
- 鉄則③:「自己資金」と「外部資金」をバランスよく使う
- 鉄則④:会計記帳を習慣化する
- 鉄則⑤:「想定外の支出」に備えて予備資金を確保
それでは詳しく解説していきます。
鉄則①:まずは「資金繰り表」を作成する
事業創業初期で最も重要なのは、現金の流れを正確に把握すること。そこで必須となるのが資金繰り表(キャッシュフロー表)です。資金繰り表では、「月初現預金残高」から「入金額」と「出金額」を足し引きし、「月末現預金残高」を計算するもので、これを整理することで、将来の現預金の見込みを見える化することができます。
- 月初現預金残高(=前月末の現預金残高)
- 入金額(売上・借入・補助金など)
- 出金額(家賃・外注費・人件費など)
- 月末現預金残高
上記を1か月単位で一覧化すれば、手元資金がいつ不足するか一目で分かります。
特別なフォーマットは不要。ExcelやGoogleスプレッドシートで十分です。ポイントは「1円単位の完璧さよりも継続更新」。月1回、できれば週1回の更新をルール化すれば、資金に対する意識が自然と高まります。
鉄則②:「固定費」はできる限り抑える
主な固定費 | 具体例 |
賃料 | 店舗・オフィスの家賃 |
人件費 | 正社員・アルバイトの給与 |
通信費・光熱費 | インターネット、電話代、電気代など |
リース・ローン | 設備や車両のリース料、借入返済 |
売上が軌道に乗るまでには想像以上の時間がかかるもの。固定費が重いと、それだけでキャッシュアウトが早まります。主な固定費は次のとおりです。
創業期は可能な限り変動費化を図りましょう。
- オフィスは自宅やコワーキングスペースを利用する
- 人材は正社員ではなく業務委託・フリーランスで補う
- 設備は中古やシェアリングサービスを活用する
「成長のための先行投資」は重要ですが、身の丈に合ったスタートこそ長く続けるための戦略です。
鉄則③:「自己資金」と「外部資金」をバランスよく使う
自己資金は不可欠ですが、すべてを自己負担でまかなう必要はありません。公的融資や補助金を組み合わせることで手元資金に余裕を持たせられます。
区分 | 代表的な制度 | 特徴 |
融資 | 日本政策金融公庫「新創業融資」自治体制度融資(信用保証協会付き) | 無担保・無保証枠あり/返済義務あり |
補助金・助成金 | 小規模事業者持続化補助金創業助成金(自治体) | 返済不要/採択率に注意 |
融資は借金であり返済義務があるため、資金使途と返済計画を明確にしたうえで申請を。補助金は返済不要ですが、採択時期と事業計画の整合性を事前に確認しましょう。
鉄則④:会計記帳を習慣化する
日々の経費精算や帳簿記入を後回しにしていると、いざ資金計画を立てたいと思った時にすぐに数字が見れなかったり、確定申告をご自身で行う場合は、そのタイミングで慌てることになります。確定申告においては、税務上のミスや漏れにもつながり、信用を損なう可能性すらあります。
創業初期だからこそ、シンプルで良いので「会計の習慣化」が大切です。
- クレジットカードや銀行口座は事業用と個人用で分ける
- レシート・領収書は週単位でまとめて整理する
- 会計ソフト(freeeやマネーフォワードなど)を活用する
クラウド会計ソフトは、銀行やクレジットカードと連携すれば自動で仕訳してくれるため、経理知識がなくても“見える化”が可能です。特に融資審査や補助金申請では、「数字の正確さ」「整理されていること」が評価されるため、日々の積み重ねが大きな差になります。
鉄則⑤:「想定外の支出」に備えて予備資金を確保
創業期には予想外がつきもの。急な設備故障、クレーム対応、受注キャンセルなど、突発的な支出に耐えられなければ事業継続は難しくなります。
- 最低3か月分の固定費を現金で確保
- 銀行の短期融資枠を事前に設定
資金があれば攻めの施策も打てますが、余裕がなければ好機を逃しがちです。予備資金は守りであると同時に攻めの原動力であることを忘れないでください。
予備資金は「守り」であると同時に、「攻め」の源泉でもあるということを意識しておきましょう。
【まとめ】日々の資金管理を適切に行い、事業に集中できる環境を整える

お金の管理は、事業の大小を問わず経営者に求められる“基本スキル”です。
とくに創業期は、何もかもが初めてで不確実性が高く、感情に流されやすい時期でもあります。だからこそ、数字で事業を見る「冷静さ」と、毎日少しずつ積み重ねる「習慣」が経営の安定を生みます。
上で書いた5つの鉄則を日々意識することで、資金繰りに悩まされることなく、より前向きに事業の成長に集中できる環境が整います。