はじめに:なぜ成長期こそ”お金の管理力”が問われるのか
事業が順調に成長している時こそ、実は最も危険な時期でもあります!「売上が伸びているから安心」「利益も出ているから大丈夫」と思っていたら、ある日突然資金ショートに陥る——これが黒字倒産の恐ろしさです。
黒字倒産が起こるのも、資金繰りが理由
黒字倒産の原因は、売上の増加に伴って必要となる運転資金の増加に対応できないことにあります。売掛金が増え、在庫が増え、人件費や諸経費も増加する中で、現金の回収が追いつかず、支払いができなくなってしまうのです。
収入が増えても利益が残らない会社の共通点とは?
収入が増えても利益が残らない会社の共通点は、売上の伸びに比例して経費も膨らんでしまい、結果として利益率が下がってしまうことです。成長期だからこそ、お金の流れを正確に把握し、戦略的に管理することが求められます。
今回は、成長期にこそ気を付け、安定的な事業運営をしていくためのコツを記載します。
1. 売上増=安心ではない!キャッシュフロー管理の優先順位
損益計算書で黒字であっても、キャッシュフロー計算書では赤字という状況は珍しくありません。利益とキャッシュフローは全く別物として管理する必要があります。
利益よりも「現金」の流れを見るべき理由
売上が計上されても、実際に現金が入ってくるまでには時間差があります。一方で、仕入れ代金や人件費、家賃などの支払いは待ってくれません…。この時間差を埋めるのが運転資金の役割です。
儲かっているのにお金がない」状態の正体
売掛金として計上された売上が実際に回収されるまでの間、運転資金として現金を準備しておく必要があります。成長期には売上の増加に比例して必要な運転資金も増加するため、現金の管理がより重要になります。
2. 固定費の見直しと投資判断の基準を明確にする
成長に伴って避けて通れないのが、人件費やオフィス費用の増加です。これらの固定費は一度増えると簡単には減らせないため、慎重な判断が必要です。
成長に伴い増える人件費やオフィス費
しかし、成長のために必要な投資を躊躇してしまうと、競合他社に遅れを取ってしまう可能性もあります。重要なのは、単なる「費用」として見るのではなく、「投資」として捉える視点を持つことです!
費用ではなく「投資」として見る視点を持つ
その支出が将来の売上や利益の増加にどの程度貢献するのかを考え、投資対効果を明確にしましょう。感情的な判断ではなく、数字に基づいた冷静な判断を心がけることが大切です。
3. 資金調達の選択肢を広げ、先回りで準備する
成長期には、設備投資や運転資金の増加により、多額の資金が必要になります。この時に慌てて資金調達を始めるのではなく、事前に複数の選択肢を準備しておくことが重要です。
成長資金のための融資・補助金・出資
資金調達の方法には、銀行融資、補助金・助成金、投資家からの出資などがあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、事業の成長段階や資金の用途に応じて最適な方法を選択する必要があります。
「借りられるときに借りる」の戦略的意味
「借りられるときに借りる」という戦略的な意味は、資金に余裕があるときの方が有利な条件で調達できるということです。切羽詰まった状況での資金調達は、不利な条件を飲まざるを得なくなる可能性があります。
4. 会計の”見える化”と社内体制の整備
経営判断に必要な情報を適切に把握するためには、管理会計と財務会計を区別して考える必要があります。
管理会計と財務会計を区別する
財務会計は外部報告のためのものですが、管理会計は経営判断のための内部資料です。管理会計では、部門別損益、商品別利益率、顧客別収益性など、経営判断に必要な詳細な情報を提供します。
経営判断に役立つ数字の出し方とは
これらの数字を定期的にチェックすることで、問題の早期発見と迅速な対応が可能になります。月次決算の精度を高め、迅速に作成できる体制を整備することも重要です。
5. 税金と社会保険のインパクトを甘く見ない

利益が出ると必ず発生するのが法人税です。また、従業員数の増加に伴い社会保険料の負担も重くなります。
利益が出た後に「意外と重い」納税と保険負担
多くの経営者が「思ったよりも金額が大きい…!」と感じるのが納税と保険負担です。利益の約3分の1は税金として持っていかれると考えておいた方が良いでしょう。また、社会保険料は会社と従業員で折半となりますが、会社負担分も相当な金額になります。
節税よりも「計画的納税」が大事な理由
節税対策も重要ですが、それよりも「計画的納税」が大事です!利益予測に基づいて納税資金を確保し、適切なタイミングで納税できるよう資金管理を行いましょう。無理な節税で本業に支障をきたしては本末転倒になってしまいます。
6. 利益剰余金の積み上げと内部留保の考え方
成長期の企業にとって内部留保は、単なる「万が一の備え」ではありません。将来の成長投資や事業拡大のための「戦略的な資金」として位置づけるべきです。
「何に備えるか」ではなく「何のために使うか」
「何に備えるか」という守りの発想ではなく、「何のために使うか」という攻めの発想で内部留保を考えましょう!新規事業への投資、競合他社との差別化を図るための研究開発費など、成長のための選択肢を増やすために内部留保を活用するのです。
成長企業の”戦略的な内部留保”とは
ただし、内部留保を過度に溜め込むことは、資金を有効活用していないと判断される可能性もあります。適切なバランスを保ちながら、成長投資と内部留保の充実を両立させることが重要です。
7. 経営者自身の”お金の視野”をアップデートし続ける
会計や財務を完全に他人任せにしてしまうのは危険です!最終的な経営判断を下すのは経営者自身だからです。
会計を人任せにせず、経営判断と直結させる
会計の専門知識は不要ですが、経営判断に必要な財務指標は理解しておく必要があります。
「数字に強い経営者」が生き残る理由
「数字に強い経営者」が生き残る理由は、データに基づいた客観的な判断ができるからです。感覚や経験だけでなく、数字の裏付けがある決断は説得力があり、従業員や投資家からの信頼も得やすくなります。定期的に財務研修を受けたり、他社の事例を学んだりして、常に知識をアップデートしていくことが重要なんです。
8. まとめ:成長期の財務管理が、未来の経営の自由度を決める

成長期における財務管理の巧拙は、将来の経営の自由度を大きく左右します。適切な資金管理により健全な成長を続けることができれば、新たな事業展開や投資機会に機動的に対応できます。
一方で、財務管理を疎かにして資金ショートや過度な借入に陥ってしまうと、経営の選択肢は大幅に制限されてしまいます。成長期だからこそ、目先の売上や利益だけでなく、キャッシュフローや財務体質の強化に注力しましょう。今日の適切な財務管理が、明日の成長の基盤となります!