「創業したいけど、実際どのくらいお金が必要なんだろう?」「お金周りで、事前に準備しておくべきことは何なのか?」 これは、創業する多くの人が抱える不安であり、明確な答えもないものです。
勢いだけで始めてしまうと、想定以上に経費がかかったり、思わぬ出費などで途中で資金が尽きてしまい、ビジネスが立ち上がる前に挫折してしまうケースも少なくありません。
そこで本記事では、創業前にやっておくべきお金の準備について、6つのステップに分けて具体的に解説していきます。
創業資金準備についての6つのステップとは
創業資金準備についての6つのステップとは、下記となります。
- 必要資金の全体像を把握しよう(初期投資+運転資金)
- 資金準備・調達手法の選択肢を知る
- 用意すべき自己資金額〜融資審査で見られるポイント〜
- 生活資金と事業資金は完全に分けておく
- キャッシュフロー管理の習慣を今からつける
- 融資以外で事業で使えるお金の制度も把握しておこう(補助金・助成金)
それでは詳しく解説していきます。
必要資金の全体像を把握しよう(初期投資+運転資金)
まずは、事業開始時に「どんなお金が必要になるか」を明確にしましょう。これには大きく2種類あります。
- 初期投資:店舗や事務所の内装費、設備費、ホームページ制作、ロゴや名刺の作成費用、法人設立や開業届の手数料など
- 運転資金:家賃、人件費、仕入れ、広告宣伝費、光熱費、通信費など、月々継続してかかる費用
特に運転資金については、開業直後からすぐに売上が上がるとは限らないため、最低でも6か月分は用意しておくのが安心です。
また忘れがちなのが「生活費」。事業とは別に、自分や家族の生活費も6か月分ほど確保しておくと、収入が不安定な時期でも精神的な安定を保てます。
資金準備・調達手法の選択肢を知る
必要なお金を明確にしたら、それをどう準備するかを考えましょう。大きく分けて以下のような手段があります。
- 自己資金:最も安心できる資金源。審査なしで自由に使える
- 融資:日本政策金融公庫や信用金庫などが提供する創業融資制度が代表的
- 出資:友人や知人、エンジェル投資家、ベンチャーキャピタルなどからの出資を受ける
創業初期は収益が出るまで時間がかかるため、「いかに安定して資金を確保できるか」が鍵となります。
特に融資は返済義務があるため、事業の収支バランスを正確に把握し、返済計画も現実的に立てることが重要です。一方で出資は返済不要ですが、株式の譲渡や経営関与などの条件が伴うケースもあるため、契約内容をよく確認しましょう。
用意すべき自己資金額〜融資審査で見られるポイント〜
融資を受ける際に金融機関が重視するのが「自己資金比率」です。これは総事業資金に対する自己資金の割合を示すものです。一般的には、総事業資金の3分の1程度(約30%以上)の自己資金があると審査が通りやすくなるとされています。
例えば、起業に1,500万円必要な場合、少なくとも500万円程度の自己資金があることが望ましいでしょう。ただし、業種や事業計画の内容によっても必要な比率は変わってきます。
また、融資審査では、以下のポイントも重視されます:
- 事業計画の実現可能性
- 応募者の経験・スキル
- 市場性・競合状況の分析
- 返済計画の妥当性
特に重要なのは、資金使途の明確さと返済計画の具体性です。「何にいくら使うのか」「どのように返済するのか」を具体的に説明できることが審査のカギとなります
生活資金と事業資金は完全に分けておく
創業直後は、生活と仕事の境目が曖昧になりがちです。しかし、お金の流れはしっかり分けることが、健全な資金管理の第一歩です。
- 銀行口座は事業用と個人用で分ける
- クレジットカードも用途別に使い分ける
- 会計処理の際も、プライベート支出を含めない
生活資金と事業資金をごちゃ混ぜにしてしまうと、正確な収支の把握ができず、税務処理も煩雑になります。
また、家族がいる場合は生活費の見通しも一緒に立てておきましょう。創業初期は無収入または不安定な収入になりやすいため、生活費も6か月分程度を事前に確保しておくのがおすすめです。
キャッシュフロー管理の習慣を今からつける
事業が失敗する最大の理由の一つが「資金ショート」です。これを防ぐには、キャッシュフロー管理が不可欠です。
月次の資金繰り表を作成する
資金繰り表は、事業の健全な運営を支える大切なツールです。毎月の収入と支出を「見える化」することで、資金の過不足を早期に把握し、適切な対応が可能になります。本資料では、実際に月次資金繰り表を作成しながら、どこに課題があるのか、どのタイミングで資金が不足する可能性があるのかを具体的に分析します。
入金・出金のタイミングを把握する
売上が計上されても、実際の入金は翌月や数ヶ月先になることが多く、資金繰りに大きな影響を及ぼします。特に取引先との契約条件(締め日や支払サイト)によっては、想定以上に現金が手元に入るのが遅れることもあります。一方で、仕入れや人件費、家賃などの固定費は先に支払いが発生するため、入金前に資金不足に陥るケースも少なくありません。そのため、入出金のタイミングを正確に把握し、月単位・週単位での資金繰りの管理が重要です。売上の数字だけではなく、実際に「いつお金が動くのか」に注目する視点を持つことが、安定した経営の第一歩となります。
余裕を持った計画を立てる
資金繰りは計画通りにいかないことが多く、予想外の支出や入金遅れが発生することもあります。そうしたリスクに備えるためにも、当初の見込みよりも10〜20%程度多めに資金を準備しておくことで、急な出費や計画の変更にも柔軟に対応できます。特に創業期や新規事業の立ち上げ時は、初めての取引先や不確定要素も多いため、余裕を持った資金計画が経営の安定に直結します。予備資金は「使わなければそれで良し」という心構えで、安全余裕をもった経営判断を行っていきましょう。
上記を確認するために、まずは簡単な資金繰り表を作り、毎月の入金予定と出金予定を見える化しましょう。毎月の資金の流れを明確にしておけば、「いつ・いくら足りなくなるのか」が予測でき、早めの対策が打てます。
また、クラウド会計ソフトを使えば、数字の入力や分析も簡単に行えます。創業前から使い慣れておくと、起業後の負担が大幅に減ります。顧問税理士をつける方は、会計ソフトの運用は税理士に任せるケースもあるかと思いますが、一般的な税務顧問では、将来のキャッシュフロー計画などの策定フォローなどは業務外であることが多いです。創業者自身がしっかり自社のお金の流れを把握できるよう、資金管理表の作成・会計ソフトの運用をある程度行えることが理想です。
融資以外で事業で使えるお金の制度も把握しておこう(補助金・助成金)
起業準備の段階から意識しておきたいのが、補助金や助成金などの公的支援制度です。これらは返済不要で、うまく活用すれば資金の大きな後押しになります。代表的な制度には以下のようなものがあります。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、商工会・商工会議所の支援を受けながら販路開拓や業務効率化に取り組む小規模事業者を支援する制度です。広告費や設備費などの販路開拓に使え、補助上限最大250万円です。経営計画書の作成と申請が必要で、採択後に事業を実施し、実績報告を行う流れとなります。全国の小規模事業者にとって、成長や新たな挑戦のための重要な資金調達手段のひとつです。
地域の創業助成金
地域の創業助成金は、地方自治体や国が地域経済の活性化や雇用創出を目的として、新たに創業する個人や中小企業を支援する制度です。地方自治体によっては、創業費用や賃料の一部を補助してくれる制度もあります。これらの助成金は、地域の課題解決や持続可能な発展を目指す創業者にとって、資金面での大きな支援となります。
これらの制度もうまく活用していく事で、創業期から資金負担少なく事業運用することができます。
しかしながら、これらの制度は「採択制」であったり、「補助金・助成金の支払い自体は後払い」という制約もがあります。採択されなかった場合は利用できなかったり、補助金・助成金受け取り前に一時的全費用を負担する必要があるため、利用する前にしっかり計画を立ててから利用されるのが賢明です。
事前に情報を集め、申請スケジュールや要件を確認し、無理のない範囲で活用を検討しましょう。
【まとめ】準備の質が、創業後の安心感と持続力を決める

創業における“お金の準備”は、単なる貯金や資金調達ではありません。全体像を把握し、現実的な資金戦略を立て、数字に強くなる——それが、安心してビジネスを始め、継続するための土台です。
焦らず、でも確実に進めるためにも、今このタイミングでできることから始めましょう。もし一人で不安な場合は、専門家の力を借りるのも良い選択肢です。
あなたの一歩が、未来の安心へとつながります。